「どこ生」開発ストーリー

「どこ生」が完成するまでの道のりは、決して楽なものではありませんでした。
ですが、数え切れないほどの失敗を繰り返しつつも、お客様の力強い応援のお陰でここまでたどり着きました。
感謝の気持ちを込めて、どこ生の開発秘話をお伝えします。

お客様の
喜ぶ顔が見たいから。

2006年に旅行会社として独立後、サラリーマン時代から温めてきた企画、観光バス車内で生ビールを飲んでもらう事を、バスツアーで試してみたのです。 酒店から借りた重くて大きいビールサーバーをバスに何とか積み込み試したところ・・・。
何と後部座席で飲んでいたお客さんはサービスエリアでの休憩時に「感動した!」と私に抱きついてきてくれました。「ありがとう!!ここまでしてくれて」とまでおっしゃってくださいました。

「バスで生ビールが飲めるとは思わんかった!ありがとう!」と何度も何度もお客さん全員がハイテンション状態に!
まさかここまで喜んでくれるとは・・。予想以上の反響に驚きました。
しかし、お喜びの声だけをいただけたわけではありません。
ツアーのたびに、毎回ビールサーバーを酒屋さんから借りてくる手間のことや、重いビールサーバーを会社の女性添乗員が積み込めないという課題、氷の溶けた水の排水をクーラーボックスに入れていたので、運転中に転倒してしまう可能性が高い事、ビールサーバー設置の安定性が悪い事などの様々な問題が同時に噴出してきたのです。
でも、お客様があれだけ喜んでくれた事を体感した僕は、覚悟を決めました。必ずみんなが満足するようなオリジナルのビールサーバーをこの手で作り上げる!と。

どこ生の誕生。しかし・・・。

手探りの状態でオリジナルのビールサーバー開発に取り掛かりましたが、今まで世の中にない物を作るのですから、とにかく大変でした。 最初に出来上がったどこ生初号機は、とても大きくて重い物でしたが、ビールサーバーを作った嬉しさで舞い上がって、使うシーンのことまで頭が回りませんでした。

周囲から「そんなもの出来るわけない、無理、無理。」と言われていた物が出来たのですから、その喜びはとても大きかったのです。

しかし、私の気持ちとは裏腹に、周りの人の反応はいまいちでした。

   

初めて出来上がった初号機はデザインも悪く、ただの立方形。しかも重さが60Kgもありましたから、大人二人掛かりでないとバスに積み込めません。 そして「どこ生初号機」をバスに積んで添乗したところ、案の定、とんでもない事件が起きてしまったのです。

あれは、テストとしてどこ生初号機をバスに積んで3回目の添乗でした。
出発前にバスガイドさんが気を利かせてビールサーバーをおしぼりで拭いてくれたのです。
ガイドさんは知りませんでした。ビールコックは一旦下げたら戻らない事を・・・。
配車場所の駅に到着した瞬間に目の当たりにした光景は今でも忘れられません。バス後部座席から液体が・・・。10?の生ビール全部がビールサーバーから流失していたのです。そうです。バスガイドさんが拭いてくれたのはビールを出すときに手前に倒すビールコックだったのです。

しかし お客さんは怒らなかったのです。
バス車内がこぼれたビールだらけで、ビールの臭いが充満して最悪な状態だというのに
「消臭スプレーすれば大丈夫やろ」 「飲まんでも十分酔えるからいい」 「重いのに大変やったやろ」
と、最悪な状態にしてしまった私に怒りをぶつけるどころか、心配してくださったのです。
最後には「今度は流失せんやつ作って来るんやぞ!がんばれ!」とまで応援してくれました。
私は涙を流しながらお客様に謝罪をし、そしてこんなに温かい言葉をかけてくれる人たちのためにも、
必ずこの恩は返さねばならないと固く心に誓いました。

新しい課題を
クリアするなかで、
生まれた出会い。

改めてたくさんの課題や欲求が噴出してきました。

  • ① どこでも簡単に持ち運んで欲しいから、もっともっと筐体を小さくしたい
  • ② 高級感を感じてほしいから、経年劣化して使えば使うほど味が出てくる古いストラトキャスターやレスポールの様なデザインにしたい
  • ③ 流失原因のビールコックは自動で戻る様にしたい
  • ④ 夏のバス車内は気温60度。それでも冷えた生ビールが飲める様な冷却材の開発
  • ⑤ 氷の溶けた水の排水タンクから水があふれてバス車内や温泉旅館施設の畳が濡れない様にしたい
  • ⑥ 収納しやすく首の部分が伸び縮む様にしたい
  • ⑦ ボディは一生使える丈夫にしたい

そして、機能性やデザインはもちろん重要ですが、なにより飲むビールが美味しくなくては意味がありません。

海外に行くことが多い私にはどうしても再現したいビールの味があったのです。それがビールの聖地プラハで飲んだ「ウ ズラテーホ ティグラ」のビール。あの味が忘れられず、本物のビールの味を体験して欲しいと思い続けてきましたが、テストでできあがってくるビールはそのクオリティに遠く及ばない代物ばかり・・・。

機能性、デザインの課題をなんとかクリアしながらも、どうしても最高のビールの味を再現することができない日々が続いていたのです。

そんなある日、たまたま自分の部屋を掃除していたところ、山積みしていた本から、一冊の本が崩れ落ちてきました。

ふと視線を送ると、その記事にはビアライゼ98 日本一のビール注ぎ名人松尾光平さんのことが書かれていました。
気になって、記事をじっくり読むと松尾さんは、ビールを最適の温度で飲んでもらうために、40年前のドラム缶型の氷冷式のビールサーバーを使用しているとのこと。
さらに、松尾さんの注ぐビールを飲むために日本中から年間4万人もの人が全国からお店に通うとの記事を読み 
「氷冷式?氷冷式ならどこ生といっしょだ! 松尾さん本人に会って話がしたい!」
と思い、その足ですぐに東京に向かったのです。

松尾さんとの出会い。
あの味に遭遇。そして新たな壁。

開店時間ちょうどに東京新橋にあるビアライゼ98に到着。
「松尾さんいるかなぁ・・・」と不安げに中へ入ると記事で見た通りの松尾さんがいる!
「松尾さんと話すんだからカウンターの松尾さんの前の席にいくしかない」
勇気を出してカウンターへ座り、声を震わせながらビールを注文しました。
カウンター越しに見る松尾さんのビールを作り上げる、流れるような所作。一分の隙もない注ぎ方。時間を忘れ、ついつい見とれてしまいました。

時間的にはそんなにかかっていなかったと思います。でも私にとってはその所作を眺めている時間がゆっくりと、まるで芸術作品を眺めているそんな素敵な時間に感じたのです。

松尾さんは最後にバターナイフみたいな銀のへらで、グラスから盛り上がった泡を横にさーっと取り除いたあと、
「ハイッ」
と、私の眼の前に置いてくれました。

「その席が一番美味しい席なんだよ」

優しく微笑みながら話しかけてくれたのです。

緊張しながら、グラスに口をつけ、ゆっくりと味わうと・・・。
「んっ?・・・」

一瞬自分の舌を疑いました。

「これはプラハで飲んだビールの味と全く一緒だーーーーーーーー!!!!!!!」

氷冷式のビールについてのヒントを得ようと訪れた店で、まさか私が長年恋い焦がれていたあのプラハのビールの味を味わえるとは夢にも思っていませんでした。

興奮冷めやらぬまま、松尾さんにビールについてのお話を聴くと、何と松尾さんもビールの味の品質維持のために、何度も聖地プラハを訪れているとの事でした。

偶然の一致が続いたせいで、興奮しながらもその勢いで、私は開発中のビールサーバー、どこ生の話、その開発にかけ情熱を松尾さんに熱心にしたのです。

「松尾さんならあの味を再現したいと思っている私の気持ちを理解してくれるはず。」
そんな勝手な話を松尾さんはじっと真剣に聴いてくださいました。

「宇野さん。」

私の話を聴き終わった後、松尾さんはゆっくりと話しかけてくれました。

「同じ氷礼式のビールだから何でも協力するよ!日本中の人に本当に美味しいビールを飲んでもらうために僕ができる事なら協力するよ!」
と言ってくださったのです。

最高の協力者を得た喜びをじっくり噛み締める時間もないまま、その瞬間から、ただの持ち運びできるビールサーバーの開発が、どこでも日本一の松尾さんのビールを味わえる、究極のビールサーバー開発に進化したのです。
それは、同時に長く険しい、世界最高の味を再現するためのノズル開発が始まったことを意味する事でした・・・。

スプーマ ノーヴァ(新しい泡)
ノズル完成

松尾さんの味を再現するには、多くの壁を越えなければいけませんでした。ビール独特の苦味を消す注ぎ方、最適な温度を維持するための氷冷方法・・・。

特に注ぎ方に関しては熟練技を習得せずに、誰でも簡単に再現できるようにしなければいけません。しかもコックをひねるだけで。無理難題とも言える壁にぶつかり、心身ともに疲れ果て、あまりの悩みの深さに体調を崩し、円形脱毛症にまでなってしまいました。

体調だけでなく、幾度となく繰り返す設計と試作品づくりで何百万と多額のお金をつぎ込み、会社のメンバーからも見放される事もありました。

しかし、私は諦めるわけにはいかなかったのです。あの日、あの時バスツアーで感動して喜んでくれた人や、大失態にも笑って許してくれたみんなのためにも。

必ず成し遂げてやるという強い意志のもと、構想3年、ついに最高のビールの味を再現できるノズル、名付けて「スプーマ ノーヴァ(新しい泡)」が完成したのです!

革命的ビールサーバー「どこ生」の誕生

大手旅行会社のJTB様の社長室で、完成した「どこ生」のプレゼンをすることになり、完成したばかりの「どこ生」を運び、目の前でじっくりと味わっていただきました。
「宇野さん!これは日本の旅行を変えるものだよ!」
と目を輝かせながら喜んでいただいたことは今でも忘れません。おかげさまで「どこ生」を採用していただくことになりました。

それからさらに2014年に日経新聞で「どこ生」が取り上げられた後、全国のホテル、旅館、旅行会社様からたくさんのお問い合わせをいただき採用され、また、居酒屋、バー、レストランなど飲食店のオーナーの他にも、個人で楽しむために、たくさんの方からもご注文をいただくことになりました。

「お客さんがものすごく喜んでくれました!」
「家に帰って、ゆっくりとビールを味わえる、しかもとても美味しい!宇野さんありがとう!」

たくさんの感謝のメッセージが毎日私のもとに届きます。あの日、あの時諦めていたら、こんなにたくさんの人に喜んでくれることはなかったかもしれません。

ビールは酔うためのものではないと思っています。
味わって、そしてその空間を楽しむ大人の贅沢な時間を過ごすために必要なものだと私は思います。

もし、どこ生を通じてあなたと出会うことができたら、それは私にとって何よりの喜びであり、一生を通じてわかりあえる友人と出会えたような幸せと感じるでしょう。

開発に携わったたくさんの方、応援してくださった方、本当にありがとうございました。

そして最後までこのメッセージを読んでいただいたあなたに感謝申し上げます。

株式会社エムトリップコーポレーション 代表取締役
宇野雅博

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